お侍様 小劇場 extra
〜寵猫抄より

   “寒い寒いも何のその”
 


そこはそれは暖かいところで。
ふわふかとやわらかくって、
甘いようなお花のようなそれは良い匂いがして。
それでいて、
頼もしいほどに安定感のある支えに守られてもいるから、
何も警戒することなくの、文字通りの手放しで、
くうすうという微睡みを堪能出来ていて。
それでもうっすらと周囲の気配や物音は届き、
睡魔の誘いに引っ張られかけては、
お耳がひくりと震える仔猫へ。
ああ ごめんネごめんと、
物音させちゃったねと、小声で謝るその声がまた、
しっとり響いて心地がよくって。

 「すいませんね。全部 勘兵衛様にさせてしまいましたね。」

 「なに、こういうものを組み立てるのはいい気分転換になる。」

ぼしぼしという声が聞こえて、
でも、仔猫の瞼は上がる気もなさそで動きもしなくて。

 「表は寒かったのでは?」

 「ええ、でも陽がありましたからね。」

そうなの、お陽様 照っててぽかぽかだったの、と。
夢うつつのまま、仔猫も応じる。

 「神社まで行ってみたのですが、
  丁度イチョウの葉が見事に色づいていて。」

 「おお、さようか。」

広い境内には、七五三だろう晴れ着姿の子供らもいて。
猫だ猫だと囲まれても剣呑だと、
社の裏へと抜けてみれば、手付かずだろう落ち葉に埋もれた庭に出た。
何とも見事な風景だったが、
小さな仔猫たちは、どちらかといや、
足元にうずたかく積もっていた金色の絨毯のほうが楽しくて楽しくて。
バスケットから出されると、それっと揃って駆け出し、
そんな彼らの勢いに煽られ、ひらんと舞い踊るのへ、
鼻先くすぐられ、えいっ、ていっと、
小さなお手々を鋭く振り回すのだけれども、

 「捕まらないのを、ムキになって追い回す様子がまた、
  久蔵もクロちゃんも何とも言えず愛らしくって。///////」

何せまだまだ幼い仔猫、四肢の長さも短くて。
ちょこちょこっと駆けてった先でふと立ち止まり、
四肢踏ん張ってバネをため、
目の先をひらりんと舞っているのへ、
狙いをつけてから ぴょいっと跳ねるのだが。
思ったほどには高くも飛べず、しかも着地した先には落ち葉の山。
がさりと突っ込んだそのまま埋まってしまい、
そんな事態へ驚いて、
がささ・ばたばた、手足ももつれての大慌てで飛び出してくる様が
これまた何とも愛らしく。

 「こっちだよと呼ぶと、ちゃんと戻ってくるのへと、
  居合わせた人たちに驚かれてしまいましたよvv」

 「何だ、自慢か?」

くすすと笑い合う気配がし、
あ、今すごく良いによいがしたと、
仔猫で坊やの久蔵が、ふわふかな頬に甘い甘い笑みをほお張り、
くすぐったいか小さな手で こしこししたところ。

 「クロちゃんもよく寝ておりますし、
  このままお布団の端に寝かせましょうかね。」

 「そうだの、陽あたりがいいから、まだスイッチは良いか。」

待望のコタツ、
お出掛けしてる間に勘兵衛さんが出しててくれて。
目が覚めたらまたまた興奮しちゃうかも知れないネと、
七郎次さんがくすりと微笑った。


  そんな仔猫たちの、冬の始まり。






   〜Fine〜  14.11.17.


  *陽が出てるうちはまだ何とか暖かですね。
   ただ、朝晩の冷え込みは徐々に進んでもいるようで。
   とうとう電気ストーブ使っております。
   コタツは、もう何年使ってないやらですね。
   さすがに扇風機を仕舞いたいんですが、入れる場所が……。
   (所帯臭い…)

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